2019年9月13日21時から日本テレビ系で放映された、第39回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2019について色々語ります。路線変更した去年との違いについても、言及していきます。
目次
- 地方予選
- 全国大会一回戦「各種地頭クイズ」
- 全国大会二回戦「輪投げ競争」
- 全国大会三回戦「ゲリラクイズ」
- 全国大会四回戦「漢字で導け!」
- 全国大会五回戦「共通する法則の壁画を選べ」
- 全国大会準決勝「ドロップ・ザ・バルーン」
- 全国大会決勝「ムーブ・ザ・モアイ」
- 結論
- 洛北高校が優勝した要因
地方予選
全カット。理由は不明だが、去年と同じく地方予選が丸ごとカットされていた。去年に引き続き放映時間が2時間半弱と短めだからか。(ちなみに、今回も1チーム3人です。)
全国大会一回戦「各種地頭クイズ」
(※5段階評価 数値が高いほど重要。上3つは知力と同じ。)
地頭力 5
知識力 2
閃き 5
体力 0
時の運 2
鳥居を通過できるかは直感力や知識力
おかしいところ探しは注意力と観察力
ここなんて書いてあるは好奇心と注意力
笑点謎かけクイズは発想力と語彙力
世界の地頭クイズは論理的思考力と閃き
が問われていたように思う。
実質的に知識を問う問題が多かった去年と違い、今年は閃きと論理的思考力および注意力が問われた問題が多かった。放映された問題に関しては、知識だけで対処できる問題は見られなかった。
まず最初は、去年と同じ「通過できるかクイズ」。去年と違い、空間的想像力というより直感力を問う問題だった。知識があれば正解しやすい問題でもあった。(実際には知識がなくとも、直感で正解できる。)ダビデ像は直感で通過できると予想できるが、ロンドンバスは実際に見たことがあるか事前に高さを知っている高校が有利になっただろう。
こちらも去年と同じ、フェイクピクチャーズ(おかしいところ探し)。お手つきを1回ごとにマイナス20点は結構キツい。言われてみれば一発で分かる箇所が正解になっていたが、相当な注意力や観察力が必要とされ非常に難しい。制限時間が短く、正解可能な高校が僅少である点も含め一回戦で最も難しかった。
去年は人々を救ったアイデアだったが、今年は「ここなんて書いてある」が出題された。日常生活における、細かい部分にどこまで注目できていたかが問われた。問題の難易度に比して正解チームが多かった。1問目の正解高校は過半数を超えていたが、2問目の正解高校がかなり少なかった。高校生が郵便局に行ったり、郵便局に注目する機会が限られているためか。
ハイパードローンクイズの代わりに、今年は「笑点謎かけクイズ」が出題された。知識を問われた去年と違い、ユーモアと発想力および語彙力が問われた。
最後は、「世界の地頭クイズ」。世界を変えた粋なアイデアに関するクイズが今年はここで登場。論理的思考力とひらめきが問われた。手術室まで子供が車で運転するというアイデアは意表を突かれた。手術が厳しい試練から楽しいイベントに変わるとは。
今年から登場の「暗号読解!TT兄弟クイズ」は、答えは簡単ながらひらめきが要求された。
全29問が出題されたが、16問がカットされてしまった。ポイントの計算方法も放映されず、選考方法に疑問を残した。一回戦で集中的に取り上げられたAICJ高校と富山中央高校が決勝まで残ったことを考えると、テレビ映りが二回戦進出に影響した可能性すら考えられてしまう。51校中、16校が通過。
全国大会二回戦「輪投げ競争」
地頭力 2
知識力 1
閃き 5
体力 4
時の運 3
二回戦は、柱への輪投げ競争。2分間で高さ約5mの柱に輪を多く入れて下さい、というお題は去年のタイヤ運びが霞むほどの超難問だった。1巡目で、1つでも輪を入れられた高校は4校だけ。再チャレンジとなった高校が続出した。摩擦力をうまく使えたか、または投げ方を工夫できたかが鍵だった。ロケット鉛筆式に輪を押し出していった四日市高校がナイスアイデア賞で勝ち抜け。
全国大会三回戦「ゲリラクイズ」
地頭力 5
知識力 5
閃き 5
体力 0
時の運 4
選手たちの宿泊するホテルで突如開催されたクイズ。9校中下位1校が脱落。醤油が垂れてしまったTシャツをどれに漬ければ汚れが一番落ちるか、という質問に答えるだけである。とは言え、疲れと安心感で油断している所を急襲するゲリラクイズは時として強豪校さえ葬り去る。東兄弟を擁する、去年の優勝校桜丘がここでまさかの敗退。
全国大会四回戦「漢字で導け!」
地頭力 1
知識力 1
閃き 3
体力 0
時の運 5
四回戦は、「乃木坂46に漢字3文字でワードを伝えろ」。8校が2つのブロックに分かれ、各ブロックの下位1校が脱落。ポイントの計算方法は放映されなかったが、乃木坂の正解者×1とビンゴの列×3の合計点である。第一ブロック3校目の日比谷高校に対する「出川哲朗」は人物の知名度に関して前2校と同等ながら、どういう漢字を当てれば良いか筆者も分からず極めて難しかった。羽生結弦や林修と余りにも難易度が違いすぎる。キーとなる漢字が思い浮かびやすい人物を引けるかが最大のポイントであり、クジ運の有無が問われた。
全国大会五回戦「共通する法則の壁画を選べ」
地頭力 3
知識力 2
閃き 5
体力 0
時の運 4
正解するたびに増えていくキーワードをヒントに法則を考え、更に正解を導いていくスタイルは去年と同じ。問題は各校違ったが、どれも法則を見つける難易度は高く難易度の差はほとんどなかったと思われる。2択という問題の性質上、法則が分からなければ一人犠牲になって次の問題に繋げるという判断が可能だった。何となく、テレビ的に面白いチームが残るべくして残ったイメージが浮かんだ。洛北だけカットされたのが不公平だが、危なげが無さすぎてテレビ的な面白さに欠けた故か。
全国大会準決勝「ドロップ・ザ・バルーン」
地頭力 5
知識力 5
閃き 5
体力 3
時の運 0
準決勝は、「200個の風船を手作りの道具で割らずにより多く落とせ」というテーマ。文房具店に売っている商品だけで独自の道具を作り、一つでも多くの風船を割らずにボックスに入れた3チームが勝ち抜けるステージ。風船の紐を水より比重の重い食塩水で湿らせ無理なく風船を落とすという、富山中部高校のアイデアには感心させられた。知識力と閃きの高度な融合である。
全国大会決勝「ムーブ・ザ・モアイ」
地頭力 5
知識力 5
閃き 5
体力 3
時の運 0
決勝は「巨大モアイ像を10m早く運べ!」用意された道具を使って、巨大モアイ像を一番早くゴールに運んだチームが優勝。ロープをモアイ像の下に通すという、エジプトのピラミッド建造の際に使われた方法を用いた洛北高校が優勝した。アクリル板に水を掛け、なおかつロープをモアイ像の下に通したAICJ高校だったが惜しくも準優勝に終わった。
結論
去年はやらせの余地がほとんど皆無の実力勝負だったが、今回はテレビ映りの良い高校が有利だった印象である。一回戦でフィーチャーされまくっていたAICJ高校や富山中部高校が決勝まで残ったゆえの先入観だと思うが。
今回も前回に引き続き地頭力を問うという趣旨だったが、時の運がものをいう場面が目立ったように思われる。従来通り、知力体力時の運を試そうという意図か。一方、その場の閃き及び地頭力が勝負を決する場面も目立った。知識の有無が命運を分ける場面も多かった。いかに土壇場で閃けるかが地頭力の真骨頂、今回も隠されたメッセージに変更なし。工作的要素が際立った前回と違い、今回は工作というよりその場の閃きや切り替えといった要素が際立った。AICJ高校を除いて、一昨年までの高校生クイズでも勝ち残っていそうな高校(いわゆる地方公立進学校)が何だかんだ強いのも去年と同じとは言え大変興味深い。クイズ(知識)が強い者はいざという時の閃きにも優れている、ということか。
洛北高校が優勝した要因
決勝戦の、モアイ像の下にロープを通す作戦以外はそれほど目立たず寧ろ地味な印象さえあった洛北高校。しかし、どのステージも卒なくクリアしてきた証拠でもあるためその実力は確かである。知力体力時の運、どの要素も満遍なく満たしていた。しかしとりわけ優勝の決め手となったのは、どんな時でも冷静さを保ち続ける平常心である。どんな場面でも表情一つ変えず、淡々と課題をこなしていた。こと平常心に関しては、どの高校よりも高い次元にあったのは確かだろう。
どこよりも平常心を保っていた者たちが優勝したのは必然である。