アラサー高学歴ニートの軌跡

アラサー高学歴ニートが、日々の行動や考えを記すブログです。

川端裕人「ギャングエイジ」は、現代の小学校を丁寧に描いた良書。

久々に読んだ本が予想以上に面白かったので、紹介します。

 

 

こんな人にオススメ

 

・読書感想文が苦手な小・中学生。小学校教師の苦労が描かれた本なので、普段の学校生活を振り返った上での反省点や感想がポンポン思い浮かぶはず。だから読書感想文が書きやすい。

・教師になりたい人や教育に関心がある人。教師や教育を取り巻く状況がよく分かり、大変勉強になります。

・学級崩壊をどう立て直すか、知りたい人。この本に求める答えがあるかもしれません。

 

 

500ページ近くあって非常に長い本ですが、難しい単語も少なく、1ページの文章量も少なめなので非常に読みやすかったです。学級崩壊を新任教師の視点から描いているんですが、現代の小学校事情を丁寧に時間をかけて取材しているのが伝わってきて大変勉強になりました。作者の川端裕人さんが記者として働いていたのも納得のリアリティでしたよ、ほんと。ちなみに川端さんは東大出てるんですが、東大出身者の独特の嫌味な感じが全くなく文体がとても爽やかなんですよね。東大に偏見を持ってる人には是非読んでほしいです(笑)。物語の大筋は、声の大きさだけが取り柄の新任、日野晃道が学級崩壊の惨禍を色濃く残す神無城小学校3年2組にやってきて、クラスを取り巻くあらゆる問題に様々な人の力を借りながら立ち向かっていく話です。ちょっと変わったヒーローもの、と捉えてもらっても大丈夫です。

 

問題行動を起こす児童は可愛い方で、育児放棄や貧困、さらには地域社会の黒々とした権力構造に謎の怪文書まで登場し、内容は結構ハードです。日野先生宛にかかってくる謎の電話や、桜の木の下に死体が埋まっているらしいとか、随所にミステリやホラー要素もあるためページをめくる手が止まりません。伏線があらゆるところに貼られていて、しかもきちんと回収される点も凄いです。エンタメとして実に面白い。一方で、小学校の新任教師の心情や苦労、小学校内部の裏事情や地域社会との密接なつながりに至るまで丁寧に描かれていて、まるで珠玉のノンフィクションを読んでいるような感覚も味わえる。

 

最後に、特に印象に残った箇所を引用します。

 

P61

「ぼくは、ぼくは……ギャングになりたいです!」

最後のところだけしっかりと晃道を見つめ、意思に満ちた目で言ったのだ。子どものころの自分はそんなふうに強い意志なんて持っていなかったし、この時の俊輔は晃道の目には、いじらしいくらい凜々しく見えた。