前回のあらすじ
好きな子の話題をきっかけに、安河内を少しずつ説得していった藤浪。そして学年末の英語のテストで90点以上取るという目標に向け、藤浪と安河内は動き始めた。ただ、残り時間は2ヶ月を切っていた。
初めて安河内宅に来た時に藤浪は、安河内の母からこれまでの英語のテストの問題と解答をもらっていた。
なぜなら、これまでの出題傾向(敵)と安河内の理解度や苦手な問題パターン(己)を知ることが、今度の学年末で90点以上取るために絶対必要だからである。
己を知り、敵を知れば百戦必勝とはよく言ったもので、実際に指導を始める前に生徒の現状や到達目標を把握しておくことは当然の義務だ。
アニメオタクを犯罪者呼ばわりする偏向っぷりからして、リスニングだけで80点とかオール実力問題とかやってきそうな感じはしていた。
ただ、実際に定期考査の問題を見てみると、案外まともだなという印象を抱かされた。
問題形式と配点はだいたいこんな感じだった。
リスニング 3×5点 計15点
単語 意味 1×3点
単語 綴り 1×7点 計10点
文法 穴埋め 2×10点
文法 並べ替え 2×5点
文法 記号 2×5点 計40点
読解 穴埋め 1×10点
読解 内容把握(記号) 3×3点
読解 内容説明(日本語記述) 4×2点
読解 自由英作文 4×2点 計35点
全体的に見て、若干問題量が多めである。
際立つのは、穴埋めや並べ替えといった、論理的思考力を問う設問が配点の4割を占める点である。
90点を狙う上で最大の鬼門になるであろう英作文の配点が8点なのは救いか。
続いて、安河内の答案をチェックする。毎回悪い点ばかり取っていると、ついつい答案を捨ててしまう生徒は多い。
しかし、奇跡的に安河内の答案は安河内母が持っていた。あまりにも英語が嫌いだから、悪い点を取ってもどうでも良いということか。
点数は毎回20点前後ではあるが、大事なのはどこで20点稼いでいるか、そして間違っている問題の間違い方である。
安河内の場合は、単語で5点、リスニングや文法、読解の記号問題で10点くらい、あとは適当に書いたところが合っているような感じだった。
つまり、文法や教科書の文章の内容をほとんど理解していない。
以上の内容を安河内に説明すると、彼は俯いて悔しそうな表情を浮かべていた。
「安河内の場合は、他教科はそれなりに出来ているから、英語もすぐに出来るようになるさ。」
「はい。」
念のため、アルファベットがきちんと書けるかチェックした。少し怪しいところもあったが、何回か書かせたら全部きちんと書けるようにはなった。
次にbe動詞をチェックしたが、amは分かっているようだが、isとareの区別がメチャクチャだった。
まあ英語苦手な生徒にとっては、よくあることであるw
本格的な指導がようやく始まった。
続く