冷蔵庫が喋っているだけのコミカルなお話かと思いきや、神に関する考察やポスト進化論の話、才能論、人間のマニュアルについての考察など深〜いテーマが隠れている濃い本だった…。
こんな人にオススメ
・普通の小説には飽きてしまったので、変わった設定の話が読みたい。
・新しい料理を開発したいが、良いアイデアが思い浮かばない。(冷蔵庫視点の話なのになので美味しそうな料理が多数登場します。例:山陰鍋、にが鍋)
・考えるのが好き。
俺、リフレ。冷蔵庫です。
凡庸な書き出しからは想像もつかなかった。冷蔵庫視点で物語が展開するだけでも斬新なのに、冷蔵庫の置かれた場所が想像の斜め上をいく。なんと、
台所に斜めに置かれてしまったのである。
冷蔵庫を買った張本人である伊作さん、妻の悦ちゃん、内装屋の営業マン、棟梁、4者それぞれで壮絶な責任のなすりつけ合いが行われるのだが、冷蔵庫はどこか他人事のように冷静に事態を眺めている。自分がどこに収まるかという超重要な問題なのに、だ。冷蔵庫視点で、夫婦喧嘩や家族それぞれの問題が冷静に分析されるのも読んでいて非常に面白い。乾いていながら、どこか温かみも感じられるのがまた良い感じだ。
最初にごめんと謝れば、早く終わったように思う。しかし、たかが一◯五円のことで、悦ちゃんは、伊作さんを追い込み過ぎたようだ。
伊作さんの甥である光くんがやってきてからは、冷蔵庫視点での語りはより冷静さを増す一方で感情的な側面も露わになっていく。
駄目駄目、そんな大人の勝手な話を納得するんじゃない。俺は動き出したい気分だ。違うって言いたい、しかし、それは無理な話だ。
冷蔵庫視点で家族の様子が語られるだけの小説かと思いきや、深〜いテーマがいくつも隠されているあたり実にこの本は奥が深い。
・神は実在するか
・神はいかなる存在か
・神でない者が神になれるのか或いは神でない者が実は元々神であり神という自覚に目覚めるのか、といった神をめぐる筆者の考察。
・才能ある者だけがたどり着ける領域がある、いやその領域には才能無き者も努力を重ねれば到達できるはずだ、といった才能をめぐる考察。
・何十億年かけて生命は進化し意識を持つ人間という種が生まれたが、意識を持つ機械だって生まれるのではという想像。