人間科学部の国語では、大問一(現代文)問六・問九、問十一、大問二(古文)問十八、大問三(漢文)問十九・問二十・問二十二で各予備校の正解が割れました。(2019年2月26日修正)
今年の人間科学部は、古文漢文でさえ各予備校で判断が分かれた設問が目立ちました。特に、漢文では4つのうち3つの設問で各予備校の判断が割れる異常事態となりました。
目次
大問一問六の検証
大問一問六は、傍線部を最も正しく説明している選択肢を選ぶ問題でした。「信頼」がキーワードなので、「信頼」を説明している段落(傍線部と同じ段落)だけ読めば解けます。部分読解が求められる設問でした。
イを正解としたのは、東進。
ハを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、早稲田予備校、増田塾。
僕の手間を増やす行為は自重なさってください、東進さん。
ハが正解である根拠
傍線部4の直前に「すなわち」という言い換え表現があるので、「すなわち」の直前の文が傍線部4の説明になっています。「信頼は、リスクの実在について共通の認識を深める手段になるから重要」が傍線部4の直前の文の趣旨です。直前の文の趣旨が書かれている選択肢はハだけなので、ハが正解です。イは、「リスクの実在を認識して予防するのに役立つ」が誤りです。リスクが予防困難だから、リスクコミュニケーションでリスク管理を図った、が傍線部4の趣旨。
大問一問九の検証
大問一問九は、傍線部の説明として不適切なものを選ぶ問題でした。また、本文中における「制度」の意味が理解できているかを問う問題でもありました。
ロを正解としたのは、東進。
ハを正解としたのは、河合塾。
ニを正解としたのは、代ゼミ、早稲田予備校、増田塾。
見事なまでに3つに割れました。今回に関しては、河合塾が賢明な判断を見せました。
イ・ホが不正解となる根拠
正解を特定するのが難しいので、明らかに誤っている選択肢を消していく。まず、イとホは傍線部6直前と直後の文の言い換えなので不正解となります。
ニが不正解となる根拠
ニは傍線部6と同じ段落の最初の文を言い換えた選択肢です。「現代社会において、自分が決定できず受動的に引き受けざるを得ないリスク」を言い換えると「制度化された個人主義において、自分が引き受けざるを得ないリスク」です。制度化された個人主義において、自分のリスクは自分で管理しなければなりません。自己管理の範疇としてニに書かれている行為をするのは、本文でも『戦略としてとても重要』と認められています。以上より、ニは不正解です。
ロが不正解となる根拠
傍線部6「制度化された個人主義」は「個人主義は制度となった」と言い換えられます。「個人主義=制度」から「制度≒個人」と分かります。管理の自己責任が求められている、という本文の文脈を踏まえると、ロの「制度(個人)に依存して生きている」は正しい。よって、ロは不正解です。
ハが正解となる根拠
河合塾曰く『リスク管理を「わたくしごと」にすることが「制度」になっている状況では、自由は「享受」できるが「行使」されてはいないと考える』。本文の『選択という形で個人の自由を享受する』を踏まえると、微妙ではありますが何とか納得はできます。また、最終段落の3ページ左端の「リスクを決定するのは、制度」という本文における「制度」の定義、及び上記の「制度≒個人」を踏まえると、ハの「行政や生産・消費」は制度とは言えません。よって、ハは正解です。早稲田レベルともなると、筆者ならではの語句の定義にまで留意しなければなりません。
大問一問十一の検証
大問一問十一は、傍線部の正しい説明を選ぶ問題でした。
ハを正解としたのは、早稲田予備校。
ニを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、東進、増田塾。
東進の陰に隠れていますが、早稲田予備校の解答速報もイマイチ信頼できません。
ニが正解となる根拠
最終段落の記述をまとめているため、ニが正解となります。ハは、「対話の糸口が見出されなくなっている」が問十一の「争いもまた強まる」の説明として不十分です。
大問二問十八の検証
大問二問十八は、内容合致問題です。
イ・ハを正解としたのは、代ゼミ、東進、増田塾。
イ・ニを正解としたのは、早稲田予備校。
イ・ホを正解としたのは、河合塾。
古文は正確な現代語訳さえできれば、正解が一つに決まる科目のはず。それでも割れるあたり、今年の人間科学部の古文は手強かったです。
イ・ハが正解となる根拠
増田塾は『検非違使の役人たちは、予め理由を告げることもせずに東宮の御所を包囲していた…のだから(たとえ後に理由がわかったにせよ)こういった行動自体を見れば、とうてい「親身」とは言い難い』として、ニを不正解としました。また、増田塾は『本文に「東宮をも捨てられやせさせ給はむずらむ」とあるのは、東宮の地位を剥奪されること…を指す。これを「周囲から見捨てられる」と言い換えるのは、やや無理がある。』とし、ホを不正解としました。ハが正解となる根拠を増田塾は示していませんが、早稲田予備校の『イは第二段落、ニは第三段落、に合致する。ハが紛らわしいが、「逃げ込んだ可能性」が不適。「逃げ込む可能性」にすべきである』がいくら何でも細かすぎるのでハは正解とみなしていいでしょう。ニが正解になる可能性もありますが、増田塾の根拠の妥当性を考えると、イ・ハが正解だと思われます。
大問三問十九の検証
大問三問十九は、傍線部の意味を聞く設問です。
ハを正解としたのは、河合塾、東進、早稲田予備校。
ホを正解としたのは、代ゼミ、増田塾。
ホについて増田塾が「茫然は、気抜けしてぼんやりした様」としています。しかし、文脈上ハも当てはまり得る。
大問三問二十の検証
大問三問二十は、傍線部の意味を問う問題です。
イを正解としたのは、早稲田予備校、増田塾。
ロを正解としたのは、東進。
ハを正解としたのは、河合塾、代ゼミ。
河合塾曰く『文脈を踏まえて「安平」の意味を考える』。一方、早稲田予備校曰く『柳夫人が嫉妬深く、よく怒鳴り散らしていたことをふまえる』。増田塾も同様の見解でした。文脈上、病は夫人の怒りを指すと思われるので、ハだと皮肉っぽくなってしまいます。ただ、話の内容を踏まえるとハも当てはまり得る。ロも不自然とまでは言い難い。当方では判断しかねます。
大問三問二十二の検証
大問三問二十二は、誤っている選択肢を選ぶ問題でした。
イを正解としたのは、代ゼミ。
ニを正解としたのは、河合塾、東進、早稲田予備校、増田塾。
早稲田予備校曰く『ニが本文末の内容に反する。後から二文目の内容は、最終文とのつながりを意識して解釈する』。よって、ニが正解でしょう。