アラサー高学歴ニートの軌跡

アラサー高学歴ニートが、日々の行動や考えを記すブログです。

【2019年度】東京大学国語第一問を高学歴ニートが本気で解説してみた。

各予備校で模範解答を公開していますが、詳しい解説は赤本発売までお預け。そりゃ困るわな。というわけで、高学歴ニートの僕が今年の東大現代文を解説しました。

今日は第一問を解説します。

 

目次

第一問(一)の模範解答

 

無秩序へと向かう自然界では科学的な反応性に乏しい物質以外秩序ある形として存在し難いが、生物は秩序ある形を生み出すという点で特異であること。(69字)

 

第一問(二)の模範解答

 

生命は、自分の複製を作る保守的な方向性と自分と異なるものを作る革新的な方向性の間で、偶発的な要素に反応し生死を繰り返す現象ということ。(67字)

 

第一問(三)の模範解答

 

人類が科学の力で世界の秩序を解明していけば、万事に正しく対応出来るようになり、人類の恐怖や不安はなくなっていくということ。(61字)

 

第一問(四)の模範解答

 

生物は秩序と無秩序の間に生き、世界に新たな秩序をもたらす。同様に、人間は予測可能なことと不可能なことが存在する世界に生きているからこそ、自由に思考したり行動したりできるため、世界に様々な新しい変化をもたらせるということ。(110字)

 

第一問(五)の模範解答

 

a 貢献 b 代替 c 細菌

 

 

第一問(一)の解説

 

設問(一)では、傍線部の詳しい説明が求められました。

 

何が例外的なものかが、傍線部アだけでは分かりません。傍線部アの直前に『こういった生物の営み』とあるので、こういった生物の営みが自然界ではどういう意味で例外的なのかを説明すれば良いのです。

 

1、「こういった生物の営み」

2、「自然界ではどういう意味で、例外的なものであるのか 」 

 

以上の要素を詳しく説明し、だいたい60字くらいにまとめます。

 

「こういった生物の営み」は、傍線部アの直前の段落を読めば分かります。『生き物の特徴の一つは、この世界に「形」を生み出すことだ』と一言でまとめられています。これだけだと分かり難いので、「生物は「形」を生み出す」を詳しく説明している箇所を探します。傍線部アの次の段落最初の文の『生命は、自分に必要な分子を取り入れ、そこに秩序を与え「形あるもの」を生み出していく』です。ポイントは「秩序を与え」です。「こういった生物の営み」をまとめると、「秩序をもたらし形あるものを生み出すこと」となります。

 

「自然界ではどういう意味で、例外的なものであるのか 」は、「こういった生物の営み」と「自然界の営み」との違いを説明すれば大丈夫です。生命は秩序をもたらす、と確認しました。では一般的な自然界では、秩序はどう扱われているのか。傍線部アの直後に「この世界は、より無秩序な方向に向かっている」という趣旨の記述があります。自然界は、無秩序に向かっているのです。

 

生命は形を生み出しますが、自然界での「形」はどうでしょう。傍線部アのある段落の最後の文で「カオスへ向かいつつある世界の中で、「形あるもの」として長期間存在できるのは、一般的に言って科学的な反応性に乏しい単調な物質が主である」という趣旨の説明があります。自然界では、科学的な反応性に乏しい物質以外「形あるもの」として存在し難いのです。

 

「例外的なものである」は「特異である」とでも言い換えればいいでしょう。

 

以上をまとめます。

 

秩序をもたらし形あるものを生み出す生物の性質は、無秩序へと向かう自然界では科学的な反応性に乏しい物質以外形あるものとして存在し難い点で特異であること。(75字)

 

日本語として意味不明です。意味が分かるように、並べ替えます。

 

無秩序へと向かう自然界では科学的な反応性に乏しい物質以外形あるものとして存在し難いが、生物は秩序をもたらし形あるものを生み出すという点で特異であること。(76字)

 

長すぎるので、削ります。本文を読めば、「形」が「形あるもの」とほぼ同じ意味で使われていることが分かります。なので「形」に統一します。さらに「形」は本文において一般的な意味とは少し違う意味で使われているので、一般的な言い方に直します。「秩序ある形」とすればいいでしょう。

 

無秩序へと向かう自然界では科学的な反応性に乏しい物質以外秩序ある形として存在し難いが、生物は秩序ある形を生み出すという点で特異であること。(69字)

 

第一問(二)の解説

 

設問(二)でも、傍線部の詳しい説明が求められました。何の「複雑で動的な現象」なのか、をまず明らかにします。傍線部イの文を最初から読むと、生命の「何か複雑で動的な現象」だと分かります。

 

「何か複雑で動的な現象」だけだと意味不明なので、言い換えている表現を探します。二つ前の段落最終文の『それは分子の、(中略)安定と無秩序の間に存在する、極めて特殊で複雑性に富んだ現象』が見つかりました。「それ」があるのでまず直前を読みます。すると、『偶発的な要素に反応し、次々に違う複雑なパターンとして、この世に生み出されてくる。そして、それらは生命が失われれば、また形のない世界へと飲み込まれ、そこへと還っていくのだ』とあり、二つ前の段落最終文の説明になっています。

 

まず、以上をまとめます。

 

生命は、偶発的な要素に反応し、複雑なパターンとして、この世に生み出され続ける現象ということ。(46字)

 

字数が若干不足している上、日本語として意味不明です。生命についてもう少し詳しく説明する必要があります。傍線部イの直前の段落の最終文で『生命は、その静的・動的という正反対のベクトルが絶妙なバランスで作用する、その間から生まれ出てきた』と生命について語られています。「その静的・動的という正反対のベクトル」は、直前の文で詳しく説明されています。以上のまとめを加えます。

 

生命は、自分と同じものを作る保守的な方向性と、自分と異なるものを作る革新的な方向性の間で偶発的な要素に反応し、この世に生み出され続ける現象ということ。(75字)

 

若干長いので、修飾語句を削ります。また、「この世に生み出され続ける現象」をもう少し格好よく言い換えたいです。傍線部イの二つ前の段落を読めば、生命はこの世に生み出され続けるが、同時に失われ続けてもいると推測できる。「生死を繰り返す現象」と言い換えます。

 

生命は、自分の複製を作る保守的な方向性と自分と異なるものを作る革新的な方向性の間で、偶発的な要素に反応し生死を繰り返す現象ということ。(67字)

 

第一問(三)の解説

 

設問(三)でも、傍線部の詳しい説明が求められました。ポイントは「福音」をどう言い換えるか、です。

 

傍線部ウの直前に指示語「それ」があるので、そのまた直前を読みます。「このように人類が科学で世界の秩序を次々に解明していけば、世界の姿は固定され、新たな「形」がどんどん生まれていく」と「それ」が詳しく説明されています。「それ」=「人類にもたらされる大きな福音」ですから、傍線部ウを詳しく説明している箇所になります。ここを分かりやすく説明すれば、解答が作れます。

 

指示語「このように」が出てきたので、比較的長い範囲つまり傍線部ウの3つ前の段落からチェックしていきます。傍線部ウ直前にある「このように〜」の文の言い換えは、傍線部ウの2つ前の段落の最後にある「それはある意味、人類が世界の秩序を理解し、未知だった世界に確固とした「形」を与えた」という趣旨の文です。「それ」が指すのは直前の文です。その文のはじめに「しかし」があるので、直前を読む。「日食や月食が恐れられていた」という趣旨の記述がありました。「日食や月食が恐れられていたが、科学で解明され予測できるようになった」が「それ」の詳しい説明となります。

 

「新たな「形」」が意味不明なので、説明している箇所を探します。前の文に『感染症に対して抗生物質が発見された時のように、世界に新しい「形」がまた一つ生まれた』がまさに探していた箇所です。直前の段落にも「ガン特効薬」という、「感染症に対する抗生物質」と似たような例がありました。「日食や月食の解明」と同じく、どちらも「人類にもたらされる大きな福音」につながりそうです。3つの例の共通点を考えます。「特効薬」や「抗生物質」は病気への恐怖や不安をなくし、「日食の解明」は未知への恐怖や不安をなくしたと考えられます。いずれも、人類の恐怖や不安をなくすものだから、「大きな福音」と言えます。

 

「世界の姿は固定され」を分かりやすく言い換えます。傍線部ウの二つ後の文前半にある『すべてのことが予測でき、何に対しても正しい判断ができるようになった』がまさにドンピシャの言い換えなので、解答に使います。ちなみに、傍線部ウの直後の『しかし、また一方こんなことも思うのだ。』は「人類にとっての福音」の影の側面を暗示しているという意味で面白い文である。

 

以上を、だいたい60字くらいにまとめます。

 

人類が科学の力で世界の秩序を解明していけば、万事を予測でき正しい判断ができるようになり、人類の恐怖や不安はなくなっていくということ。(67字)

 

「でき」が続いて、日本語として不自然なので直します。予測し判断することは、すなわち対応することです。よって、

 

人類が科学の力で世界の秩序を解明していけば、万事に正しく対応出来るようになり、人類の恐怖や不安はなくなっていくということ。(61字)

 

第一問(四)の解説

 

設問(四)でも、傍線部の詳しい説明が求められています。「本文全体の趣旨を踏まえて」と要求されているので、本文の簡単な要約も解答に入れる必要があります。「人間も生物も秩序と無秩序の間に生き、世界に新たな秩序をもたらす存在である」といった内容が書ければ大丈夫でしょう。

 

傍線部エ自体の詳しい説明も必要です。傍線部エの言い換えは直前の文にあるので、直前の文をさらに分かりやすくしていきます。「「分からない」世界こそ、人が知的に生きていける場所」の言い換えをまず探します。傍線部エの二つ前の段落の『知的な存在としての人間はこの「分からない」世界から、少しずつ「分かること」を増やし「形」を作っていくことで、また別の意味で「生きて」いる』 です。

 

『世界が確定的でないからこそ、人間の知性や「決断」に意味が生まれ、そして「アホな選択」も、また許される』は、「世界が混沌としているからこそ、人間には多様な選択肢がある」とでも言い換えればいいでしょう。

 

傍線部エの『いろんな「形」、多様性』は、様々な秩序と説明します。

 

以上の内容をまとめます。傍線部エは人間に関する説明なので、冒頭に生物に関する説明を書きます。人間も生物も同じような存在だと本文で書かれているので、「生物が〜するように、人間は〜するということ」という形でまとめます。

 

生物が秩序と無秩序の間に生き世界に新たな秩序をもたらす存在であるように、人間は混沌とした世界に少しずつ「分かること」を増やし「形」を作っていく存在である。世界が混沌としているからこそ、人間には多様な選択肢があり様々な秩序をもたらせるということ。(122字)

 

「人間は混沌とした世界に少しずつ「分かること」を増やし「形」を作っていく存在である」は、先ほど作った設問(三)の解答を利用すれば分かりやすく説明できます。「人間は科学の力で世界の秩序を解明していく」に置き換えれば大丈夫です。また、「存在」というワードが余計なのでカットします。

 

生物が秩序と無秩序の間に生き世界に新たな秩序をもたらすように、人間は科学の力で世界の秩序を解明していく。世界が混沌としているからこそ、人間には多様な選択肢があり様々な秩序をもたらせるということ。(97字)

 

「多様性が花開く世界」 というワードから想像される、色彩豊かでワクワクするようなイメージが上記の解答に欠如しているので後半を書き換えます。傍線部エの2段落前にある「人間は科学の力で世界の秩序を解明していき、世界に新しい空間を生み出す。」という趣旨の記述、傍線部エの直前にある「混沌とした世界だからこそ、人間は多様に思考でき、「アホな選択」さえ許されている」という趣旨の記述を参考にします。「人間には多様な選択肢があり様々な秩序をもたらせる」を、「人間は自由に思考したり行動したりできるため、世界に様々な新しい変化をもたらす」と書き換えます。

 

また、「〜ように」とあるので、人間が秩序と無秩序の間に生きている、というニュアンスも補う必要があります。秩序=もう解明された、無秩序=未解明、と本文で示されているので、解明された真実と未知が同居する世界に生きている、とでもしておきましょう。「予測可能なことと不可能なことが存在する世界に生きている」とも言い換えられます。

 

以上を踏まえ、解答を修正します。「〜ように」で繋ぐと文が長くなってしまうので、一旦文を切ってから「同様に、人間は〜」とします。

 

生物は秩序と無秩序の間に生き、世界に新たな秩序をもたらす。同様に、人間は予測可能なことと不可能なことが存在する世界に生きているからこそ、自由に思考したり行動したりできるため、世界に様々な新しい変化をもたらせるということ。(110字)