アラサー高学歴ニートの軌跡

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【各予備校で解答が割れた問の検証】2019早稲田大学解答速報 法編

法学部の国語では、大問一(古文)問三・問七、大問二(漢文)問十・問十二、大問三(現代文)問十六・問十七・問十九・問二十、大問四(現代文)問二十三で各予備校の正解が割れました。(2019年2月26日修正)

今年の法学部は、古文漢文でさえ各予備校で判断が分かれた設問が目立ちました。案の定、現代文は各予備校の正解が割れる設問が散見されました。

 

目次

大問一問三の検証

 

大問一問三は、重要助動詞「べし」の用法識別でした。

 

ロを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、増田塾。

ホを正解としたのは、東進、駿台、早稲田予備校。

 

法学部ともなると、古文の知識問題でさえ各予備校の正解が割れるんですね。

 

が正解である根拠

 

駿台の解説を要約すると「和歌の「べし」の意味は推量・当然。YとZの意味も推量・当然。ちなみにXは可能」。増田塾の解説を要約すると「文脈を踏まえると、Zは予定に近い」。どちらの見解にも一理あると見て、本問は保留とさせていただきます。

 

大問一問七の検証

 

大問一問七は、内容合致問題でした。話の大まかな流れ及び細部の読み取りが要求されています。

 

ロを正解としたのは、代ゼミ、東進。

ハを正解としたのは、駿台、早稲田予備校。

ホを正解としたのは、河合塾、増田塾。

 

見事なまでに3つに割れました。古文は正確に現代語訳すれば解答が一つに決まる科目だと思っていましたが、法学部ではそんな常識は通用しませんでした。

 

が正解となる根拠

 

駿台曰く『イは「帝に愛されて」、ロは「親を失った娘が不憫で」、ニは 「女性たちを放逐」、ホは「両親を失って、邸にも住めなくなったので」 がそれぞれ不適』。増田塾の解説を要約すると『ハは「地方で暮らしているのが寂しく」に当たる記述なし。ホは本文の「昔ながらの住みかも跡絶えしたつきなさに」とある。つまり、姉と宰相の君にとって、「昔ながらの住みか」で元通り暮らせるなら下向せずとも良いとなる。よって、ホは本文の記述だけで成立するため正解となる』。どちらの見解にも一理あるため、正解の判断を保留させていただきます。

 

大問二問十の検証

 

大問二問十では、発言の裏に隠された心情が問われています。本文を根拠として推測する必要があるため、各予備校の考え方の違いによって判断が分かれました。

 

イを正解としたのは、東進、早稲田予備校。

ホを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、駿台、増田塾。

 

東進、早稲田予備校の国語の解答速報はどうも信頼性に欠けるので、イが不正解のように思えてきます。

 

ホが正解となる根拠

 

問八の「立派な寺院を築きたい」および同じ行の「枵然」が、ホの「寺の現状〜感じたので」と対応しているため、ホが正解です。イは、直前の「戯れて曰く」を踏まえていますが、「枵然」つまり寺の惨状を目の当たりにした際に発生したであろう様々な感情に一切触れていないため不正解となります。「立派な寺にするぞ、って言ってたけど、どこが立派な寺なんだ。」と発言者が思ったのは明らかでしょう。

 

大問二問十二の検証

 

大問二問十二は、合致しないものを一つ選ぶ問題です。

 

ロを正解としたのは、早稲田予備校。

ハを正解としたのは、代ゼミ。

ニを正解としたのは、東進、河合塾、駿台、増田塾。

 

漢文は正確な現代語訳さえできれば、正解が一つに決まる科目のはず。それでも割れるあたり、法学部は別格ですね。

 

ニが正解となる根拠

 

駿台曰く『傍線部直前の「其行謹潔」「学博而才敏」「卒之以不私」などの表現に加えて、問題文冒頭 から、かつて慧礼が筆者につき従って遊学したこと、傍線部4の直前から、 州の人の援助があったことを読み取る』。よって、ニが正解。また、ニの後半「世俗の有力者〜理財の術をも心得ていた」は本文に書かれていません。理財(財産の運用)ができるなら、そもそも寺ががらんとして何もない状態にはなっていないはずです。

 

大問三問十六の検証

 

大問三問十六は、傍線部の理由を聞く設問です。

 

ロを正解としたのは、代ゼミ、駿台、早稲田予備校、増田塾。

ホを正解としたのは、東進、河合塾。

 

早稲田大学現代文の解答速報において、東進や河合塾は読解の甘さが時々見られるため信頼性に欠けます。この時点で正解はロと言っていいでしょう。

 

ロが正解である根拠

 

第七段落後半で『デジタル写真装置の記憶は、写真装置とは異なって、物質ではなくデジタルなデータである』と、写真装置とデジタル写真装置の違いが説明されています。また、第八段落にデジタル写真装置の具体的な説明があります。『デジタル写真装置は〜写真装置と同様に、イマジネールな自己像を消し去るものである。(中略)物質性すら持たないがゆえに、いちだんと主体や自我のゆらぎを促進するものとなる』。以上の本文記述をまとめた選択肢がロであり、ロが正解となります。

 

ホが不正解である根拠

 

第九段落を読む限り、ホの記述は確かに正しいです。だが、設問の要求に答えていないのでホは不正解です。解説しましょう。傍線部2の直前の文は、写真装置とデジタル写真装置があたかも同一だと思えるという趣旨の内容です。傍線部2の直前で、傍線部2の直前の文を受けて否定する「しかし」が使われていることに注意します。「しかし」を受けて傍線部2「さほど単純なことではない」と続くので、写真装置とデジタル写真装置は違うと言っていることが分かります。問十六はその理由を求めているのですから、両者の違いを説明していない選択肢は不正解となります。よって、ホは不正解です。某予備校は「問十六は微妙」という趣旨のコメントを残していますが、傍線部前後を精読すれば明確に答えが決まるので決して微妙ではありません。

 

大問三問十七の検証

 

大問三問十七は、空欄補充問題です。空欄前後を正確に読解できているかを問う設問です。

 

ロを正解としたのは、東進。

ホを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、駿台、早稲田予備校、増田塾。

 

また東進の解答速報がやらかしました。

 

ホが正解である根拠

 

空欄1の直前をチェックすると、デジタル写真装置=空欄1と分かります。デジタル写真装置を言い換えている選択肢が正解となります。直前の段落の前半で『デジタル写真装置は、データによる記憶装置そのものである。それは写真装置に内在していた記憶装置という特性をより特化したものとなっている』と、デジタル写真装置が詳しく説明されています。『』内の記述を短くまとめたホが正解となります。

 

ロが不正解である根拠

 

ロの「信号化された記憶」ですが、コンピュータ本体かCDなどに保存されていると本文に書かれています。断じてデジタル写真装置とイコールではありません。

 

大問三問十九の検証

 

大問三問十九は、空欄補充問題です。空欄前後の精読が要求されています。

 

イを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、駿台、早稲田予備校、増田塾。

ニを正解としたのは、東進。

 

選択肢が紛らわしかったとはいえ、正解は明確です。

 

イが正解である根拠

 

空欄2の二行後に「対象を物体としてではなく、モニタの「光の束」として見ている」という趣旨の記述があります。空欄には「光の束」または同意味の表現が入ります。本文最後に「物質ではなく「光の束」」とあり、空欄1の直前の段落に『物質ではなくデジタルなデータである』とあるので、物質と光の束及びデジタルなデータが対になるものだと分かります。「光の束=物質性なきデジタルなもの」だから、イが正解です。ホは紛らわしいですが、ホを空欄2に当てはめると不自然になるため不正解となります。

 

ニが不正解である根拠

 

ニは、「光の束=物質性なきデジタルなもの」というニュアンスが無いため不正解です。

 

大問三問二十の検証

 

大問三問二十は、傍線部を正しく説明している選択肢を選ぶ問題。大問の最終問題だけに、本文全体の理解も問われています。

 

ロを正解としたのは、河合塾、駿台、東進、早稲田予備校、増田塾。

ハを正解としたのは、代ゼミ。

 

珍しく、代ゼミが我が道を行きます。

 

ロが正解である根拠

 

傍線部4の二行後に『物質ではなく「光の束」』とあります。傍線部4の「光の束」を説明している「物質性の喪失」という語句が入っている選択肢を選びます。よって、ロが正解となります。イは「コンピュータに人間が従属してしまう」、ニは「撮影者に虚無感を与える」、ホは「コンピュータに記憶をあずけることは人間の本能に反する」が本文に無いためそれぞれ不正解となります。

 

ハが不正解である根拠

 

ハは傍線部4の「わたしたちの画像の記憶が、わたしたちから離れ」を説明していないため、不正解です。

 

大問四問二十三の検証

 

大問四問二十三は、傍線部の語句を正しく説明している選択肢を選ぶ問題です。

 

ニを正解としたのは、東進。

ホを正解としたのは、河合塾、代ゼミ、駿台、早稲田予備校、増田塾。

 

またまた東進がやらかしました。

 

ホが正解である根拠

 

傍線部3の「問題」は、直後の文で言い換えられています。直後の文のさらに詳しい説明は次段落にあり、『同一の物が、異なる共同体によってなぜ違った価値をもつのか』とあります。ここまでがホの前半と対応しています。傍線部4の直前の段落の、共同体と共同体の間の交換の詳しい説明がホの後半と対応するため、ホが正解なります。

 

ニが不正解である根拠

 

ホの解説の通り、傍線部3の「問題」は『同一の物が、異なる共同体によってなぜ違った価値をもつのか』です。ニにそのような記述は無いため、ニは不正解です。

 

【おまけ】大問四問二十五の例解

 

大問四問二十五は、法学部お約束の長文記述問題です。各予備校の模範解答の中には、日本語として理解し難いものもありました。(それでも僕の例解よりレベルは高いと思います。)

 

受験生でも書けるレベルの例解です。多分、10点満点で6・7点の答案でしょうが合格にはそれでも十分だと思います。

 

各共同体及び各個人は、自己対話及び自己と同じ規則を持つ者との対話に逃避せず、自他の関係の非対称性を自覚し、共通する規則を持たない他者及び自分と違う言語ゲーム(共同体)を受容する必要がある。その上で、各共同体及び各個人は共通の規則を前提としない関係を元に社会を構築する。各共同体及び各個人は、相互の関係における非対称性を前提としたコミュニケーションを行う。(177字)