アラサー高学歴ニートの軌跡

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【2019年度】東京大学国語第四問を高学歴ニートが本気で解説してみた。

各予備校で模範解答を公開していますが、詳しい解説は赤本発売までお預け。そりゃ困るわな。というわけで、高学歴ニートの僕が今年の東大現代文を解説しました。

第一問は難しかったので、今日は第四問を解説します。

 

目次

第四問(一)の模範解答

 

困っている僕に無関心な乗客たちを見て生じた疎外感が、母とはぐれて電車に取り残されてしまった僕の心細さをますます強めたということ。(65字)

 

第四問(二)の模範解答

 

駅員がくれたヌガーで母を間近に感じた僕は、母とのつながりが回復されたと感じ、ようやく日常の世界に戻ってこれたと安堵したから。(62字)

 

第四問(三)の模範解答

 

自分を無条件に庇護してくれる存在と別れ、自分にとって未知である大人の世界に、子供のうちから迷子という形で無理やり対面させられること。(66字)

 

第四問(四)の模範解答

 

母が自分を庇護してくれる存在ではなくなったことに気付いて心細く思ったが、もう大人になった以上人前で泣くことは許されないから。(62字)

 

第四問における注意点

 

ずばり、「僕」と「自分」の使い分けです。筆者自身の体験を語るとき、本文では「僕」が使われています。すなわち、僕=筆者です。一方、迷い子そのものについて語るとき、本文では「自分」が使われています。すなわち、自分=あらゆる人間と言っていいでしょう。

 

設問(一)(二)では筆者自身の体験について聞かれているので、解答には「自分」ではなく「僕」と書いた方がいいでしょう。逆に、設問(三)(四)では一般的な迷い子について聞かれているので、解答には「自分」と書かねばなりません。ちなみに、各予備校の模範解答では「僕」は全く使われておらず「自分」で統一されていました。東京大学において国語の採点が厳しいのは周知の事実なので、一人称の使い分けにまで注意する必要があると思います。

 

第四問(一)の解説

 

設問(一)では、傍線部の詳しい説明が求められました。

 

「不安を一層加速させた」より「不安が一層加速した」の方が説明しやすいので、傍線部アの主語と目的語を入れ替えます。傍線部アは「不安は、その風景の僕との無縁さによって、一層加速した」と言い換えられます。次に、傍線部アを細かく分解して、どこを説明すれば良いか明らかにします。

 

1、「不安」

2、「その風景」

3、「僕との無縁さ 」 

4、「一層加速した」

 

以上の要素を詳しく説明し、だいたい60字くらいにまとめます。

 

「不安」は、傍線部アより前の本文を読めば簡単に分かります。「母とはぐれて、電車に取り残されてしまった心細さ」と説明すれば十分です。

 

「その風景」で指示語「その」が使われているので、直前の文を読みます。『それはぞっとするくらい冷たい風景だった』とあります。指示語「それ」は、直前の文の『その時の、僕の背負いこんだ不幸には何の関心も示さない乗客たちの姿』を指しています。「その風景」の説明は、「困っている僕に無関心な乗客たち」でいいでしょう。

 

「僕との無縁さ」は、言い換えると「僕とは無関係である」です。もっと言うと「僕とは無限の距離がある」ということになります。「その風景の、僕との無縁さ」は、「困っている僕に無関心な乗客たちと僕とは、無限の距離がある」と換言できます。「無限の距離」は、傍線部ウの2行前の『疎外感』とぴったり一致します。「その風景の、僕との無縁さ」の説明は、「困っている僕に無関心な乗客たちから感じた疎外感」となります。

 

「一層加速した」は、「ますます募った」とでも言い換えましょう。

 

以上の言い換えをつなぎ合わせます。

 

母とはぐれて電車に取り残されてしまった心細さが、困っている僕に無関心な乗客たちから感じた疎外感によって、ますます募ったということ。(65字)

 

設問(一)では、「その風景の、僕との無縁さ」が「が」で強調されています。設問の意図を汲んで、やはり主語と目的語を元通りに直すことにします。「感じた疎外感」は、「頭痛が痛い」と同様の違和感があるので「生じた疎外感」と言い換えます。以上に伴い、「募った」は「強めた」に変更します。

 

困っている僕に無関心な乗客たちを見て生じた疎外感が、母とはぐれて電車に取り残されてしまった僕の心細さをますます強めたということ。(64字)

 

第四問(二)の解説

 

設問(二)では、傍線部の詳しい理由説明が求められました。聞かれているのは、不安が消えた理由です。設問(二)の「不安」は、設問(一)の「不安」と同じです。母とはぐれて電車に取り残されてしまった僕の心細さが解消されたのは何故か、を書けばいいのです。直接の理由は、母との関係が元通り繋がったと僕が思ったからです。僕がそう思ったのは、駅員がくれたヌガーが母を思い出させてくれたからです。以上を60字程度にまとめます。

 

駅員がくれたヌガーで僕は母を思い出し、同時に母との関係が元通りになったと感じて安堵したから。(46字)

 

字数が若干不足しているので、「不安が消えていた」をさらに詳しく説明します。ここでの「不安」は「母のいない世界で感じた心細さ」です。「不安が消えていた」のは、「母との関係が切れていた世界から母との関係が元通りになった世界(=日常)に戻ってきたと僕が実感したからです。

 

駅員がくれたヌガーで母を思い出した僕は、母との関係が回復された日常に戻ってきたと実感し安堵したから。(50字)

 

傍線部イのある段落の最初で『母を待っている姿があまりにも寂しそうだった』とあるので、「母を思い出した」はおかしいですね。「母を間近に感じた」に直します。

 

駅員がくれたヌガーで母を間近に感じた僕は、母との関係が回復された日常に戻ってきたと実感し安堵したから。(52字)

 

「母との関係が回復された日常」以降の部分は日本語として少し不自然なので、直します。迷子からやっと解放された、というニュアンスも加えます。ついでに、傍線部イの次の段落の「世界」と子供時代の僕の「日常」との対比を匂わせます。

 

駅員がくれたヌガーで母を間近に感じた僕は、母とのつながりが回復されたと感じ、ようやく日常の世界に戻ってこれたと安堵したから。(62字)

 

 

第四問(三)の解説

 

設問(三)では、傍線部の詳しい説明が求められました。

 

まず、傍線部ウを細かく分解して、どこを説明すれば良いか明らかにします。

 

1、「このような邂逅」

2、「予行演習」

3、「暴力的に体験させられる 」 

 

以上の要素を詳しく説明し、だいたい60字くらいにまとめます。

 

「このような邂逅」は、傍線部ウを含む文を最初から傍線部ウの直前まで読めば分かります。「大人になる過程で誰もが経験させられる、自分を無条件に庇護してくれる存在からの離別及び他者としての世界との向き合い」とでも理解しておけば大丈夫です

 

「他者としての世界」だと不親切なので、詳しく説明しましょう。「他者としての世界」の説明は、傍線部ウのある段落の最初から二文目にあります。『僕のことなど誰も知ることのない「世界」』です。もう少しヒントが欲しいので、ここでの「世界」の説明をしている箇所を探します。傍線部ウの一行後に『たった一人で世界へ放り出された』、その一行後に『もう孤独に世界と向き合っていかなくてはいけない』があります。この二つの記述から、僕にとって「世界」は未知の存在であると推測できます。以上より、「大人になる過程で誰もが経験させられる、自分を無条件に庇護してくれる存在からの離別及び自分にとって未知である世界との対面」と説明出来ます。

 

「予行演習」は、本来の時期より早めに練習しておくこと、です。本文で「大人になる過程で誰もが経験する」と書かれていることを踏まえると、「大人になる過程より前の子供時代から経験すること」となります。短くまとめると「子供のうちから経験する」となります。

 

「暴力的に体験させられる」は、「無理やり体験させられる」と言い換えればいいでしょう。これだけだと説明として不十分なので、「暴力的に体験」を説明している箇所を探します。傍線部ウの直後に『それが迷子という経験なのではないだろうか』とあります。迷子という単語を補って「迷子という形で無理やり体験させられる」とすればいいでしょう。

 

以上の言い換えをつなぎ合わせます。

 

大人になる過程で誰もが経験させられる、自分を無条件に庇護してくれる存在からの離別及び自分にとって未知である世界との対面を、子供のうちから迷子という形で無理やり体験させられること。(89字)

 

さすがに長すぎるので、25字くらい削ります。「大人になる過程で誰もが経験させられる」、「無条件に」を削ります。

 

自分を庇護してくれる存在からの離別及び自分にとって未知である世界との対面を、子供のうちから迷子という形で無理やり体験させられること。(66字)

 

「世界との対面を、体験させられる」は、「世界に、対面させられる」でも意味が通じます。それに伴い、「からの離別及び」を「と別れ、」にし、日本語として読める文章にします。

 

自分を庇護してくれる存在から別れ、自分にとって未知である世界に、子供のうちから迷子という形で無理やり対面させられること。(60字)

 

「大人になる過程で誰もが経験させられる」というニュアンスはやはり必要なので、「未知である世界」を「未知である大人の世界」とします。また、「無条件に」を補い、庇護を詳しく説明します。

 

自分を無条件に庇護してくれる存在と別れ、自分にとって未知である大人の世界に、子供のうちから迷子という形で無理やり対面させられること。(66字)

 

 

第四問(四)の解説

 

設問(四)では、傍線部の詳しい理由説明が求められました。聞かれているのは、こっそり泣く理由です。解答のポイントは、本文で直接書かれていない「こっそり泣く」理由をどう推測するかです。傍線部エの直接の理由は、そのことに気づいたから、です。「そのこと」とは、母が自分を庇護してくれる存在から自分を待つだけの小さな存在になってしまったこと、です。以上を60字程度にまとめます。

 

母が自分を庇護してくれる存在から、自分を待つだけの小さな存在になってしまったことに気付いたから。(48字)

 

若干短い上に、泣くに至った感情の変化や「こっそり」泣く理由が書かれていません。泣く理由は、母が小さな存在になってしまったことを心細く思うからでしょう。

 

「こっそり泣く」理由のヒントは、傍線部ウと傍線部エの間にある『迷い子はこれでもかと泣く。どんなに泣いても、もう孤独に世界と向き合っていかなくてはいけないのだと悟った時、少年は迷い子であることと訣別し、大人になるのだと思う』です。分かりやすく説明すると、「大人になるということは、孤独に世界と向き合うということ。大人が泣いてもいいのは、自分が泣いているのを誰も知らない時である。言い換えると、大人である以上人前で泣くことは許されない。」となります。

 

以上の要素を付け加えます。

 

母が自分を庇護してくれる存在から自分を待つだけの小さな存在になってしまったことに気付いて心細く思ったが、もう大人になった以上人前で泣くことは許されないから。(78字)

 

長すぎるので、前半を短くします。「母が自分を庇護してくれる存在から自分を待つだけの小さな存在になってしまったこと」はすなわち、「母が自分を庇護してくれる存在ではなくなったこと」です。

 

母が自分を庇護してくれる存在ではなくなったことに気付いて心細く思ったが、もう大人になった以上人前で泣くことは許されないから。(62字)